常秋九十九折

主に恋愛ゲームのプレイ感想

ビルシャナ戦姫 感想

【タイトル】ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~
【発売日 】2020年9月17日
【メーカー】オトメイト
【シナリオ】伊東愛 他4名
【メインキャラクター原案】羽田浩二

 

【個人的評価】83/100点
【総プレイ時間】約22時間
【攻略おすすめ順】平教経→弁慶→春玄→源頼朝平知盛(公式)

 

喧嘩番長乙女」「百花百狼」を手がけた伊東愛さんのディレクション・シナリオ作品で、しかもシナリオ評価高めということで購入を決めました。
源平モノは大まかにしか知らず、義経弁慶の主従と平知盛の最期くらいしか興味を持っていなかったので期待と不安半々でプレイ開始。
公式攻略おすすめ順があるのでその通りに攻略しました。

 

機能面は、次の選択肢や未読部分までまでジャンプする機能はありますが章はまたげず、スキップは最速にしても遅かったのが残念でした。
動作も普通に動作する部分と、回想や戦闘場面などは少し重い部分ありましたがプレイに支障は無かったです。
既読未読が入り混じる場面もそこそこあったので、既読マークや既読テキストの色変えなどがあると助かるなとも感じました。

 

以下各ルート感想。結構長めです。
※致命的なネタバレは避けていますが完全にしていないわけではないのでご注意下さい。

 

 

 

 

 

初回は平教経。
共通ルートはテンポ早めだなと感じていたら、すぐ教経ルートに入りました。
このルートの見どころは「義経と教経の関係性の変化」「お互いの立場の違い」「それぞれの人としての成長」だったかなと思います。
とにかく教経がまっすぐな武人なので攻略対象へのストレスなくプレイできました。最初は猪武者か? という印象でしたが、様々なことを経て成長した後もそのまっすぐさを持っていたことはとても好印象でした。
義経の武人のしての甘さは最初気になりましたが乙女ゲーの主人公なので仕方ないかなと割り切れる程度でした。
そしてその甘さもちゃんと最後まで貫き通し、立派な信念になっていたのがストーリーとしても筋が通っていて、それが特にストレスなくプレイできた要因かなと。
主人公も攻略対象もどんどん人を斬るし戦ならではの非情な場面もあり、ストーリーもシリアスなので安易にイチャつかなかったのも見ていて安心しました。敵近くにおるぞ!という場面でイチャイチャされるとツッコミ入れたくなってしまうので……
初回に相応しく、痛みも伴いつつハッピーすぎないハッピーエンド。
悲恋エンドはこれだよこれ!と叫ばずにはいられない哀切さがあって最高でした。敵同士そうなる確率の方が高いし、平家である教経に「波の下で~」と言われると泣けてしまう。
バッドエンドも「敵同士だから簡単には結ばれないよ!^^」と言わんばかりの内容で、そこが徹底していたのは好感度高い。
ツッコミを入れずに進められるストーリーで予想外に楽しかったです。伊東愛さんを信じて良かった。
ただラストの果物を食べるSEがいかつくて笑ってしまった。
調べたら「平家物語」では義経のライバルポジなんですね!しかも強かったらしく、生存説もあるみたいでニコニコしました。

 

2周目は弁慶。
初回割と影が薄かったよなと思ったら、共通ルートが共通ルート内で更に分岐するんですね!? これキャラごとに差分あるなら結構な量だな!?
このルートの見どころは「主従の絆」「家族を知らぬ者同士のシンパシー」だったかなと思います。
そして教経ルートでは触れられなかった義経の秘密についても触れる内容でした。正直ファンタジーな内容に面食らってしまった……義経が女性だったのもファンタジーですがそれは乙女ゲームなので割り切れる。
更に弁慶ルートなのに弁慶が不憫。NTR未遂などあって、あるキャラクターの存在感がかなり強いので弁慶の存在感結構食われてるなと。
この作品プレイ前から義経弁慶主従のことは曖昧な知識でも好きだったので、義経が良き主であり弁慶がその義経を支える忠臣として描かれていたのは嬉しかったです。
立ち往生エピソードも部分的に回収してくれたのにもスタッフの心意気は感じる……んだけど、教経ルートが敵同士なのに惹かれあってしまう関係を描ききったのに比べると、今作独自の要素が強く出ていた分主従の関係を描くスペースは自ずと狭まってしまうと言うか。
弁慶はとても良い奴なので義経と2人で幸せになってほしいと本当に思った分、本筋やバッドエンドでのあるキャラクターによる義経NTR(未遂)展開に弁慶のことが心底不憫でならないです……しかも弁慶はある意味蚊帳の外なのが更につらい。


サブキャラこそ攻略したくなるタイプなのでサクッとできる短さの忠信エンドありがたいし丁度良かったです。

 

3周目は春玄。
このルートの見どころは「幼馴染から変化する関係」「愛の深さゆえの危うさ」「ある人物の真実」だったと思います。
史実寄りな内容に加えて、今までとは違う大きな仕掛けが動くルートで新鮮に楽しめました。今思えばキャラクタービジュアルにヒントがあったな~と膝を打ちました。やられた。
春玄は義経と1番距離が近いキャラクターで恋愛に発展するのは特に容易であろうと想像できる存在だった分、予想外の大きな仕掛けとそれにまつわる怒涛の展開に引きつけられました。その上で史実にそった部分もあり、どう転ぶのか分からないシナリオがすごく楽しかったです!
ツッコミどころが全くないわけではないんだけど、個人的にはスルーしそうになる範囲でした。
しかも義経に関する伝説でもかなり眉唾ネタっぽいものを連想させる展開もあり笑ったし軽度ですがヤンデレまであって盛りだくさんすぎる。
教経ルートも楽しかったですがこのルートも別ベクトルの楽しさがありました。流石にこのルートのネタバレはできないので語れることは少ないですが、重要かつ面白いおすすめなストーリーでした。


継信エンド、どちらかと言えば忠信派でしたが継信の見た目に違わない内容で兄弟どちらも好きになりました。

 

4周目は源頼朝
このルートの見どころは「頼朝の在り方の理由」「頼朝と義経の選んだ道」「自己犠牲」だったかなと思います。
今まで頼朝は言葉も表情の変化もかなり少なく、どんな人物かをつかみかねていました。しかし何故頼朝がその在り方をするようになったかを知ると納得しかありませんでした。あとめっちゃクーデレだった。クールキャラはギャップが肝要なので、攻略推奨順も含め満をじしてという感じ。
義経が主人公の物語で頼朝を外すことはできないもんな。攻略順を気にしない人でも、かなりガチで春玄の後に攻略することをおすすめしたいです。
ストーリーが進むにつれて変わってくる義経と頼朝間の感情の矢印の向きや大きさに「義経がんばれー!」とすっかり応援に回っていました。義経がひたすらに健気で応援せずにいられない。なんだかんだ今までで1番恋愛してたルートな気がします。頼朝から義経を取らないでやってくれ……
他ルートでクローズアップされた要素が合わさって、そこから更に一歩踏み込む内容でした。春玄ルートに続いてキャラクタービジュアルにあらかじめヒントが提示されているルートでもありました。2回目もやられた。


高綱エンドはバッドエンドも含め頼朝エンド全回収した後だと「頼朝を放っておいていいのか義経!?」という気分になってしまっていたたまれない気持ちに。内容は爽やかなものでした。

 

ラスト、5周目は平知盛
このルートの見どころは「平家の真実」「知盛の在り方の理由」「源平の行末」だったかなと思います。
今まで割と恋敵(?)的な役回りが多かった分このキャラクターを好きになれるのかが、正直かなり不安でした。
しかし各ルートで余裕綽々の暗黒微笑を振り撒いていたのと比べると、自分のルートではちゃんと人間らしい部分もあり「苦手かも」という印象から「そこそこ好き」にはクラスチェンジしました。義経が男前だったな。
内容は、史実に近い部分もある春玄・頼朝ルートと比べると色々な意味でファンタジー要素が強かったです。でもそのファンタジー要素が存在する理由が判明したりと、実質グランドルートと言ってもいい内容で今までの謎や伏線が回収されるものでした。なのでハッピーエンドは爽快感、開放感がかなりありました。あのキャラクターがああなるとはなぁ~
その反面悲恋エンドやバッドエンドは源氏と平家の中でも特にこの2人が結ばれることの難しさを感じるものばかりで、ハッピーエンドはギリギリでやっとつかんだものなんだなぁ~と思うと義経と知盛の2人にも幸せになってもらいたくなります。


重衡エンドはどうなったら義経に気持ちが向くのかがかなり謎でしたが、兄だけでなく弟の気合い入った場面を見られて思わずにっこり。兄弟人気が高いのも納得です。

 

 

総括
「源平モノ」を乙女ゲームとして独自の設定を入れ込みつつ分かりやすく再構築した設定とストーリーは一見の価値あり。
システム面は前述の通り少し気になる部分はありましたが、私がスキップの速さが速いほどハイになるオタクなのであの速さで十分な方もいるかと。
気になるのならばやってみて損はない出来ではないでしょうか。クリエイター買いして正解でした。
戦乱の世を生きるキャラクターたちの生き様を心ゆくまで楽しませてもらいました。敵味方どのキャラクターも人間味があり好きです。
プレイ時間長めと聞いてなかなかプレイ出来ずに積んでいましたが、こんなに面白かったとは。
メインキャラクター立ち絵の表情差分の繊細な表現は昨今の乙女ゲームでも白眉ではないでしょうか。テキストウィンドウの義経の顔グラを見ているだけで楽しかったです。

 

特に好きなキャラは

  1. 頼朝
  2. 教経
  3. 春玄・佐藤兄弟

でしたが、好きなシナリオのルートは

  1. 教経ルート
  2. 頼朝ルート
  3. 知盛ルート

だったかなーとかなり悩むところです。どのルートも見どころがありました。

 

普段乙女ゲームをやってもキャラ萌えしたりはほぼしないのに今作では頼朝の話もっと見たい……となり気付いたらFDとVFBを注文していました。恐ろしや頼朝。
「百花百狼」はシナリオがヤバい具合にぶっ刺さっていまだに抜けてませんが、今作はキャラクターが刺さりました。キャラ全員好きになれるゲームは良いゲーム。