常秋九十九折

主に恋愛ゲームのプレイ感想

冥契のルペルカリア 感想

ツイッターfusetterを使って投稿していた「冥契のルペルカリア」の感想メモです。

シナリオがいいらしい、だが人を選ぶと聞いて思い切って買ってみた作品ですがでしたがものの見事に落ちました。

 

ツイッターでの叫び

 

 

作品を自分なりに端的に表した呟き

 

 

感想は以下クリアした時系列順にメモしてあります。

致命的なネタバレは出来るだけ避けていますが隠しきれないものもあるので読むのはクリア済み推奨。結構長いです。

※他作品への言及があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥契のルペルカリア感想

シナリオが良いという評判を聞いて予約していた「冥契のルペルカリア」Switch版をやっとプレイ。
可愛らしいキャラクターデザインでどんなストーリーを見せてくれるのか期待と不安を抱きながら開始しましたが、まさかこんなにドシリアスだとは思わなかったな!?
青春エンジョイ的にみんなで主人公の家に集まって演劇公演の準備♪なシーンもありましたが、それが情念にまみれまくった公演へ突っ込むための助走だとは思わないじゃん…

 

初回、天使奈々菜エンドクリア。
なんだこの……この、歪でどろどろで、でもそれを形式上だけでもキラキラした‪可愛いオブラートで包んだ様な物語は……(白目)
奈々菜のキャラだけでも「可愛いだけで家事がちょっとできるだけ、他は何もできない女の子」という歪んだ造形をしている。
しかし何もできないはずの女の子には積み重ねたある経験があり意外な所で劇団を助ける…という部分の、ある経験を積むようになったきっかけに妙に生暖かいリアリティを感じて、その瞬間「この作品やばいな!?」と気付きました。

今までも不可解な言動、表現や意味深なテキスト等ありましたが、どこまでが演劇でどこまでが現実なのかすら分からなくなってくるし、そもそもこの物語自体演劇とかなの!?と混乱しまくりました。
この作品光か闇かで言えば完全に闇の属性の作品だけど、まさかここまでえげつないストーリーを見せられるとは思わず、いつの間にかシナリオライターさんの筆力にねじ伏せられていた。
分類上はギャルゲーだけど「可愛い女の子と甘酸っぱい恋愛を楽しむゲーム」では決してなく、コンプしていない自分には「得体の知れない演目」なのが怖ろしくもあり、見たことのない物語を見せてくれるのではという期待もあり…という不思議な作品。
でも正直この作品をコンプした後どんな気持ちになるのか怖い。

CHAOS;HEAD NOAH」を初めてプレイした時も主人公と一緒に不安になったり気持ち悪くなったりしたけど、カオヘの主人公は何も知らなかったのと比較すると環はまだ明かしていないことがあるのでそれも気にかかる。
登場人物全員が信用ならなくて何を突然言い出すか分からないし、白髪赤目にいきなり盤上をひっくり返されたりするんじゃないかとヒヤヒヤするんだよなぁ〜こわい。
確実に初めてプレイするタイプのゲームでした。普通のギャルゲーかと思っていたので見事に製作陣の手玉に取られて手のひらの上でコロッコロ転がされてる…

次は 箱鳥理世エンドクリア。
環は未来に何をしたんだ…
そして詩を朗読するだけで主人公をぶっ倒れさせる折原京子は何者なんだ。
でも京子の「あはっ」は好き。声と演技が良すぎる。

理世とのイチャチャ甘々パートは突然の普通のギャルゲーの様な展開に戸惑いつつも、それでもやっぱりこういう終わりなんだなと。
菜々奈エンドではあの幸せは虚構であると予想は出来ても、それをいざ本当に提示されると面食らってしまいました。
でも今回はどう終わるんだろうと思ったら、あの幸せな物語を朧の存在があったとはいえ断ち切れた理世にびっくり。強い子だな。
でも更に謎が深まる朧の存在。 

次は 匂宮めぐりエンド。
菜々奈強くなったね…!!
まさか菜々奈からあんな言葉が聞けるとは思わず、陰鬱なだけではないこの作品の厚みにびっくりしてしまった。
理世も菜々奈も優しく幸せに満ちた虚構を振り解いて現実に立ち向かえるの、素直にすごいなと思います。

そして選択肢から始まる停滞。
あんな悲劇が劇団ランビリスにあったとは思いもせず、あの4人がそうだったとも知らなかったけれど、明かされてみると腑に落ちる過去。
座長と悠さんハナさんと、めぐりと環の繰り広げる日常は居心地が良くて、停滞していてもいいと思えてしまいました。
座長と悠さんに付き合ってほしかったな。

次は 架橋琥珀エンド。
匂わせる描写があったので、薄々そうではないかと感じていましたが、やっぱり環と未来はそうなっていたんですね。
Switch版は行為には及んでいませんでしたがどう見ても修正入ったやつだこれ…Vitaの「シルヴァリオヴェンデッタ」も実の姉弟が〝姉と弟のような関係〟に変えられてたらしいもんな…

家庭も家族の関係も何もかもが歪んだ中でどうすることもできず足掻いた結果がこれだったのは、ただ悲しい。
反面朧と琥珀が担っていた役割は全く予想がつかなかったので驚きました。
朧が思わせぶりな言葉を口にする理由、琥珀の演技が天才的だった理由は明かされてみればシンプルで、でもああいう人生を歩んだ朧にそれが与えられていたのは皮肉と言うほかない。

菜々奈の部分も、めぐりエンドであんなにも前向きな菜々奈を見た後だと辛かった。
失って初めて大切だったと気付くなんてありきたりなモチーフですが、今ここでこの人でそれをやるのかと、シナリオの容赦のなさに逆に笑ってしまう。

このエンドへの選択肢を選んだのは自分ですが、環に早く現実と向き合ってほしくて仕方がなかったです。 

次はラスト トゥルーエンド。
双葉と環、未来の出会いを知れたのは嬉しい。
双葉がどうして環を助けてくれたのかが分からなかったけど、環の前では双葉は自分自身でいられたんだなと思うと本当に貴重な友人だったんですね。
でも一目惚れした相手とその正体の乖離にはかなり苦しんだんだろうな。

未来の1番の望みが本当に単純でありきたりなものだったのも、本当に切なかった。
自分と相手が結ばれることよりも、ただ大切な人の幸せだけを考えるなんて、そんなのあまりに普遍的で、でもとても尊い気持ちじゃない…
「I(アイ)は未来を求めない」というキャッチコピーの意味がここで分かるのも、更に切なかったです。

環を翻弄し苦しめ混乱させ、プレイヤーもそれに振り回された京子の存在の意味を知ると最初からプレイし直したくなりますね。
ごめん京子怖がったりして…京子が環と普通の学園生活を送る話が私も見たかったよ…

ラスト、幻想譚は終わった世界でみんなが前を向けたことがとても眩しかった。

悲しみは一生癒えないとしても年月が経てば段々と軽くなっていく。不条理な世界の中でどんなに悲しくとも苦しくとも生きていかなければいけない。
こう書くだけだと説教くさいし「でも自分は悲しい/苦しいんだよ!」と反発したくもなりますが、この作品は環と未来を含めた登場人物たちの苦しみをこれでもかと描いてきた末に出てきた未来の台詞だと素直に受け入れるしかないなという感じでした。

環と未来の決めた兄妹の在り方も共感できた。そうなんだよそこの一線は超えてはいけないんだよやっぱり…!

「冥契のルペルカリア」シナリオいいらしいしやってみよ〜と軽い気持ちで予約した自分を「気合い入れてやれよ!」と揺さぶりたい気持ちです。まさかこんなに心動かされて夢中になるとは思いませんでした。
苦悩をこれでもかと徹底的に描いたからこそ浮かび上がる人生へのエール。
悲しみ苦しみはいたるところにあふれているけど、だからと言って諦めを簡単に選んではいけない。
人を選ぶゲームだと言われているし自分もそう思いますが、この作品が内包したポジティブなメッセージを求めている人は多いのでは。

まさかこんなに深い作品だったとは。嬉しい誤算。本当に初めてプレイするタイプの作品でした。
ブランドデビュー作の「紙の上の魔法使い」をプレイしていると印象がかなり変わるみたいなので未プレイだったのが残念でならない…
他のウグイスカグラ作品もやりたくなりました。

コンプ後にこんなに切なく前向きな気持ちになれるとは思いませんでした。プレイして良かったと思える作品になりました。

追記

友人や恋愛対象に抱く気持ちが「好きだけど嫌い」「好きだけど憎い」とポジティブな感情とネガティブな感情が表裏一体になっている台詞もいくつかあったのが印象的でした。
現実で誰かに対して好きな気持ち100%なんてことはなくて、絶対に負の感情がある分、二次元では好き100%な感情が出てくることが多い気がします。
それで救われることもありますが、泥臭いネガポジ両面な気持ちがリアルで好きでした。

シナリオやグラフィックも力作でしたが音楽も負けずに素晴らしくて、特に切ないメロディーのBGMが好きです。
「ライムライトの残火」は言うまでもなく名曲で、配信したりして多くの人に聞いてもらいたいですが、無理なんだろうな…切ない。
ウグイスカグラ作品全部Switch移植して主題歌BGM全曲配信してほしい…